
いつだったかなぁ…。夏の暑い日。あまりにも苦しくて、まだ小学生にもなっていない小さな息子に話したことがあるのです。
「ママね、お父さんと一緒に出掛けるの少し辛いんだ。」
「どうして?」
「お父さんが言うこと、正しいってことはわかっているんだけど、そればっかりではつまらないし、息苦しいんだよね。」
「・・・」
まだ生まれてきて数年しか経っていないのに、自分の経験を総動員させて頭を巡らせてくれているのがわかりました。
「こども園の友達が(自分が遊んでいるのに)、おもちゃをかたづけちゃうみたいなこと?」
「う..ん」
誰にも話せなくて、でも、どうにかして吐露しないとやりきれなくて、
目の前にいてくれているのが小さな息子だけだったから、
半ば独り言のように愚痴を吐いた自分なのに。
純粋な優しさに触れて、思わず涙声になりそうで、それ以上は会話を続けることができませんでした。
気持ちをグッと”普通”に戻そうと、小さな手をギュッと握って、
左折してくる車に注意を向けながら、一緒に小走りで横断歩道を渡ります。
次の図書館前の信号は長いんだよね。
夕方とはいえ、まだまだ日差しがきついので、息子を少しでも陰で待たせます。
そんな”母”としての自分がどうやら日々を持ちこたえさせてくれているようなのです。
図書館に着くと、夏休み特集の読書感想文・読書感想画の課題図書コーナーがぱっと目に入りました。その年の課題図書だけでなく、過去の作品も一緒に紹介されています。
『みんなのためいき図鑑』
「ためいきばっかりついて、”疲れた”ばかり言って」と夫に揶揄されたときのことを思い出して、
またもや苦くて重いものが押し上げてきそうになりましたが、ふぅっと息を吐いて『みんなのためいき図鑑』を手に取りました。
「おかあさんは、おこっていうわけじゃない。
まちがったことを、いってるわけじゃない。
でも、加世堂さんが、とてもかわいそうに思えてきた。
保健室で食べた、ナシを思い出した。だんだんと、おいしくなくなってきた、あのナシ。
たぶん、ナシだけじゃないだろう。
なにを食べてもおいしくないような、加世堂さんは、そんな家でくらしているのかも。」「いままでも、いろんなこと、否定されてきて、夏休みが終わったら、学校へくるだけで、せいいっぱいやった。エネルギーがなくなってしまった。」
「これからは、もうちょっと、自分の気持ちをだいじにする」
『みんなのためいき図鑑』より
誰もいない部屋で読み終えて、ふぅぅっ…、と大きくためいきを一つ。
少し肩の荷が下りました。
自分の気持ちも大事にしていいんだよね。
人生折り返しの中年がなに青いことを言っているのやら、と自分を自分で嘲笑しながらも、そうだそうだ、と静かにエールを贈ります。
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